根拠令和元年房総半島台風(台風第15号)は、9月8日から9日にかけて千葉県に上陸しました。県の記録によれば、人的被害は死者12人・重傷15人・軽傷76人、住家被害は全壊448棟・半壊4,694棟・一部損壊77,091棟・床上床下浸水50棟、ライフライン被害は停電641,000戸・断水133,474戸に及び、県は「過去69年間で関東地方に上陸した台風としては最強クラス」と記述しています。この被害構成の特徴は、死者数に対して一部損壊が77,091棟と圧倒的に多く、停電が641,000戸に達した点にあります。すなわち、直接の生命被害よりも、住まいが壊れ電気と水が止まった状態での生活継続が県内で広範に発生した災害でした。県内には洪水浸水想定区域、土砂災害警戒区域、津波浸水想定の3系統の図面がいずれも整備されており、地域によって備えるべき災害の型が異なることを国土地理院の地図で確認できます。
根拠国勢調査2020年によれば、千葉県の総人口は6,284,480人で、年代別の内訳は0〜9歳469,851人(7.48パーセント)、10〜19歳546,190人(8.69パーセント)、20〜39歳1,330,416人(21.17パーセント)、40〜64歳2,103,730人(33.47パーセント)、65〜74歳840,224人(13.37パーセント)、75歳以上859,767人(13.68パーセント)、年齢不詳134,302人(2.14パーセント)です。65歳以上は1,699,991人で27.05パーセント、15歳未満は734,496人で11.69パーセントにあたります。20〜39歳のうち女性は645,801人で、同年代の48.54パーセントを占めます。整備方針は、防災研修センターの役割を「県民の防災教育・研修に特化し、実践的な訓練・研修を実施する」ことと定め、対象別に自主防災組織リーダー研修、要配慮者の避難支援講座、事業所防災講座、市町村長防災危機管理セミナー、高齢者向け防災講座、女性のための防災講座といった課程を例示しています。
解釈この2組の数値を重ねると、対象区分ごとの課題が具体的な形をとります。一般県民については、75歳以上が859,767人・65〜74歳が840,224人という規模に対し、台風第15号で停電641,000戸・断水133,474戸が発生した事実が意味するのは、在宅で電源と水を失う高齢者が県内に大量に存在しうるということです。したがって一般県民向けの課題は「避難所へ行く訓練」だけでは足りず、在宅避難下の生活継続に軸足が要ります。女性・若者については、20〜39歳が1,330,416人・うち女性645,801人という母集団の大きさに対して、現行の研修導線がこの層の生活動線に接続していないことが課題です。企業(事業者)については、一部損壊77,091棟という住家被害の規模が、従業員の生活基盤が壊れた状態での事業継続という論点を突きつけます。行政職員については、被害が複数の市町村に同時に及ぶ広域災害への対応経験を、平時にどう積むかが課題になります。
解釈県全域の年代構成に加え、国勢調査2020年の市町村別集計を見ると、高齢化率には県内で大きな幅があります。高齢化率が最も高いのは御宿町の51.93パーセント(総人口6,874人のうち65歳以上3,570人)で、鋸南町48.06パーセント、南房総市47.15パーセントと続き、上位10市町村はいずれも外房・南房総の沿岸部に集中しています。対照的に、高齢化率が最も低いのは浦安市の17.49パーセントで、市川市20.81パーセント、習志野市22.98パーセントと、都市部・湾岸部の市町村が下位に並びます。県全域の高齢化率27.05パーセントを基準にすると、上位10市町村はすべてこれを13ポイント以上上回り、下位5市町村は約4ポイント(印西市3.95〜浦安市9.56ポイント)下回ります。つまり「一般県民向けの在宅避難課題」は県内で一様ではなく、外房・南房総側は高齢者が在宅で電源・水を失う場面への備え、都市部・湾岸部側は現役世代・子育て世帯が仕事や通学と両立しながら備える場面への備えという、異なる重点を持つ課題として分けて設計する必要があります。
提案以上から、対象区分ごとの人材育成の目標を次のとおり設定します。一般県民(一般向け・年16回)は「自宅と地域の災害リスクを自分で確認でき、停電・断水が3日間続く状況で在宅避難を選択・実行できる状態」を目標とし、ハザードマップの読み取り、簡易トイレ・給水・非常用電源の実技、家具固定の確認を重点課程に置きます。一般県民(女性・若者向け・年6回)は「妊娠中・乳幼児を育てる家庭、および学生が、自分の生活条件に合わせた備えを1つ以上実行に移す状態」を目標とし、妊婦・乳幼児家庭向け課程と高校生・大学生向け課程を各3回配置します。自主防災組織(年11回)は「組織の設立・運営に必要な手続を説明でき、避難所運営ゲームまたは災害図上訓練を自組織で開催できる状態」を目標とし、設立支援・リーダー育成・実技の3層で編成します。企業(事業者)(年11回)は「事業継続計画を自事業所の条件で点検し、従業員の帰宅困難と生活基盤の被災を前提に見直せる状態」を目標に、一般企業・福祉事業所・災害時活動企業の3系統で編成します。行政職員(年16回)は「初動配備から住家被害認定・避難所運営・受援までの一連の判断を、広域災害の想定で説明できる状態」を目標とし、首長・幹部・初任・個別災害対応の4層で編成します。
提案目標の到達度は、対象区分ごとに測定方法を分けて確認します。一般県民は受講後アンケートで「自宅の災害リスクを確認した」「備蓄または家具固定を実行した」の回答割合を、女性・若者向けは受講者に占める39歳以下の割合と実行行動の回答割合を、自主防災組織は「自組織で訓練を開催した」の3か月後回答を、企業(事業者)は「事業継続計画の見直しに着手した」の3か月後回答を、行政職員は理解度確認の設問正答率をそれぞれ主指標とします。いずれも様式4で述べる4段階の評価設計の第2段階(学習)と第3段階(行動変容)に対応させ、研修実施日の翌月末を目途とする県への報告に第1段階・第2段階の結果を、四半期報告に第3段階の追跡結果を載せます。地域による災害の型の違いについては、出前講座の開催市町ごとに、洪水・土砂災害・津波のどの想定を主題にするかを事前に県および開催市町と協議して決め、同一の課程名でも演習の想定シナリオを差し替えて実施します。
提案市町村別の高齢化率は、一般県民向け課程の重点配分と出前講座の開催地選定に反映します。高齢化率50パーセント超の御宿町・鋸南町、40パーセント台後半から40パーセント台前半の南房総市・長南町・長柄町・大多喜町・勝浦市・いすみ市・睦沢町・九十九里町の外房・南房総の町村では、在宅避難の実技課程のうち簡易トイレ・給水・非常用電源の実技と、要配慮者の避難支援(近隣による安否確認・搬送補助)を主題とする回を重点的に配置します。出前講座は現行の7市町から3か年で14市町へ広げる計画(様式3-2)のうち、既に含まれる長南町に加え、令和9年度以降の新規開拓先の選定でこれら高齢化率上位の町村を優先候補とします。一方、高齢化率が県内で最も低い浦安市・市川市・習志野市・流山市・印西市を含む都市部・湾岸部では、共働き世帯・子育て世帯が参加しやすい平日夜間の短時間課程とオンライン研修を優先し、女性・若者向け6回のうち一定回数をこれらの市に配分します。この重点配分は、高齢化率という市町村単位の指標を、開催地・実施時間帯・演習内容という3つの設計変数に具体的に落とし込むものです。
高齢化率上位10市町村と下位5市町村(国勢調査2020年)
| 市町村 | 総人口(人) | 65歳以上人口(人) | 高齢化率 | 75歳以上率 |
|---|
| 御宿町 | 6,874 | 3,570 | 51.93% | 27.74% |
| 鋸南町 | 6,993 | 3,361 | 48.06% | 25.95% |
| 南房総市 | 35,831 | 16,895 | 47.15% | 25.78% |
| 長南町 | 7,198 | 3,215 | 44.67% | 22.98% |
| 長柄町 | 6,721 | 2,960 | 44.04% | 22.60% |
| 大多喜町 | 8,885 | 3,883 | 43.70% | 23.82% |
| 勝浦市 | 16,927 | 7,290 | 43.07% | 23.37% |
| いすみ市 | 35,544 | 15,065 | 42.38% | 22.86% |
| 睦沢町 | 6,760 | 2,843 | 42.06% | 22.20% |
| 九十九里町 | 14,639 | 5,920 | 40.44% | 19.89% |
| 印西市 | 102,609 | 23,698 | 23.10% | 9.44% |
| 流山市 | 199,849 | 46,047 | 23.04% | 11.80% |
| 習志野市 | 176,197 | 40,483 | 22.98% | 11.97% |
| 市川市 | 496,676 | 103,359 | 20.81% | 10.43% |
| 浦安市 | 171,362 | 29,971 | 17.49% | 7.87% |
| 千葉県全域(参考) | 6,284,480 | 1,699,991 | 27.05% | 13.68% |
千葉県の年代別人口と対象区分の対応(国勢調査2020年)
| 年代区分 | 人口(人) | 総人口比 | 対応する研修対象区分 | 重点とする課題 |
|---|
| 0〜9歳 | 469,851 | 7.48% | 一般県民(保護者経由) | 乳幼児家庭の備え、災害時の乳児栄養 |
| 10〜19歳 | 546,190 | 8.69% | 一般県民(若者向け)・その他(学校教職員) | 学校防災教育、高校生等の地域参画 |
| 20〜39歳 | 1,330,416 | 21.17% | 一般県民(女性・若者向け)・企業(事業者) | 生活動線に接続した情報接点、妊娠・育児期の備え |
| うち20〜39歳女性 | 645,801 | 10.28% | 一般県民(女性向け) | 妊婦・乳幼児家庭向け課程、女性の参画拡大 |
| 40〜64歳 | 2,103,730 | 33.47% | 企業(事業者)・自主防災組織・行政 | 事業継続、組織の担い手確保 |
| 65〜74歳 | 840,224 | 13.37% | 自主防災組織・一般県民 | 地域の担い手育成、在宅避難の実技 |
| 75歳以上 | 859,767 | 13.68% | 一般県民(高齢者向け) | 停電・断水下の在宅生活継続、避難支援の受け手側 |
| 年齢不詳 | 134,302 | 2.14% | — | 構成比の分母に含む(統計上の区分) |
| 総人口 | 6,284,480 | 100.00% | — | — |
令和元年房総半島台風(台風第15号)の被害と課程への反映
| 被害区分 | 実数 | 課題として読み取れること | 反映する課程 |
|---|
| 死者 | 12人 | 直接死よりも生活被害が広範に及んだ災害である | 一般県民(一般向け) |
| 重傷・軽傷 | 15人・76人 | 発災直後の応急救護の需要が生じる | 一般県民、自主防災組織(実技) |
| 住家 全壊・半壊 | 448棟・4,694棟 | 住まいを失った世帯の避難所生活と再建支援 | 自主防災組織、行政職員 |
| 住家 一部損壊 | 77,091棟 | 在宅のまま被災した世帯が最も多い | 一般県民(在宅避難)、企業(従業員の生活基盤) |
| 停電 | 641,000戸 | 電源喪失下での情報取得・冷暖房・医療機器 | 一般県民(高齢者向け)、企業(事業者) |
| 断水 | 133,474戸 | 飲料水・生活用水・トイレの確保 | 一般県民(在宅避難の実技) |
応募者記入欄(自社情報を当てはめる箇所)
対象区分別の想定受講者数と定員設計
なぜ必要か: 人材育成の目標に対する到達規模は、自社が確保できる講師数・会場・運営人員によって決まるため。
必要な根拠: 過去に実施した同種研修の1回あたり受講者数、運営人員の配置実績。
反映先: 様式3-1の「人材育成の目標」欄と様式3-2の年間実施回数内訳。
対象区分ごとの講師候補と担当領域
なぜ必要か: 在宅避難の実技、事業継続計画、避難所運営ゲーム、住家被害認定など、対象区分ごとに求められる専門性が異なるため。
必要な根拠: 講師の経歴書、資格の写し、過去の登壇実績、内諾の記録。
反映先: 様式3-2の「講師」列と様式7(業務の提供体制)。