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業務理解の章に公的データを根拠として貼る方法

事実→解釈→限界→提案文の型で公的統計を提案書に落とし込む手順を、愛媛県案件の実例で解説します。

なぜ「数値を貼るだけ」では点にならないか

公募型プロポーザルの業務理解の章では、多くの提案者が同じ公的統計を引用します。差がつくのは数値の有無ではなく、「どの範囲まで言えて、どこから言えないか」を書き分けているかどうかです。

審査員は仕様書を読み込んでいるため、文言を言い換えただけの現状分析はすぐに見抜かれます。出典・取得日・対象範囲を明示し「ここまでは言えるが、この先は言えない」と限界を認める書き方は、事業理解の深さと誠実さを同時に示します。限界を書かない提案書は「都合のよい数値だけを拾った」という印象を与えます。

事実→解釈→限界→提案文→自社情報の型

根拠を提案書に落とし込む手順は、次の5段階に固定すると再現性が上がります。

  1. 事実(公式データ): 出典名、調査年、対象範囲、数値をそのまま書き写す。加工・要約はまだしない。
  2. 解釈: 数値が事業のどの論点と結びつくかを1〜2文で説明する。前年比・全国比・KPIとの対比はここで行う。
  3. 限界(言えないこと): 対象範囲・集計単位・年次から言えないことを明記する。存在しない内訳を仮定しない。
  4. 提案文: 事実・解釈・限界を踏まえ、業務理解や成果把握の章に貼る文章にする。断定できない部分は「〜と考えられる」と書く。
  5. 自社情報で補う: 自社の実績・体制・保有データで、統計だけでは埋まらない部分を補足する。担当者自身が記入する欄として残す。

事実と解釈と提案文を1つの文にまとめず段階を分けて書くと、どこまでが公式データでどこからが解釈かを審査員が一読で判別できます。

データの入手先

公的データは事業のテーマに応じて次の情報源から選びます。当サイトが整理している出典の一覧はデータカタログで確認できます。

情報源主な用途更新頻度
e-Stat(総務省統計局)国勢調査・人口推計、家計支出統計国勢調査5年ごと、推計値は毎年
観光庁 宿泊旅行統計調査都道府県別の延べ宿泊者数、国籍別内訳月次速報・年間確定値
都道府県の統計書・観光統計観光客数、観光消費額など県独自の集計年1回が多い
気象庁気温・降水量などの気象データ日次〜リアルタイム
国土交通省 国土数値情報行政区域、施設立地などの地理データデータセットにより異なる
行政計画(総合計画・地域防災計画・地域公共交通計画)自治体が既に採用している目標値・現状認識改定周期は5〜10年が多い

e-Statと国土数値情報はAPI取得も可能ですが、観光統計や都道府県の統計書の多くは公開ページからの手動確認が前提です。出典URLと取得日は必ず記録します。

実例: 愛媛県 観光需要喚起事業(MP-2026-0038)

愛媛県 観光需要喚起の案件ページの根拠の組み立て方を型に沿って示します。

事実: 観光庁『宿泊旅行統計調査』確定年間推移表(都道府県別)によると、愛媛県の令和6年(2024年)日本人延べ宿泊者数は3,920,570人泊、全国籍計では4,372,780人泊です。愛媛県観光振興課『令和6年 観光客数とその消費額』では、県の観光客数(延べ)が23,042千人で前年比+1.1%、観光消費総額は926億円で前年比▲12.1%でした。

解釈: 客数は増えているのに観光消費総額は減っており、「客数を増やす」ことと「観光収入を増やす」ことが乖離し始めています。事業のKPIである宿泊者数15,000人泊は日本人延べ宿泊者数の約0.38%に相当する規模で、年間実績と比較すると現実的な上乗せ目標だと言えます。

限界: 観光庁『宿泊旅行統計調査』には平日/休日別の内訳が存在しません。事業のKPIが平日限定の宿泊促進を前提とする場合、年間実績との比較だけでは「平日限定でも達成可能か」までは検証できません。

業務理解の章に貼る提案文の例:

観光庁『宿泊旅行統計調査』(確定年間推移表、都道府県別、取得日2026年9月)によれば、愛媛県の令和6年日本人延べ宿泊者数は3,920,570人泊です。本事業のKPIである宿泊者数15,000人泊は、この実績の約0.38%に相当し、規模として現実的な水準にあります。ただし同調査には平日/休日別の内訳が存在しないため、平日限定という達成条件のもとでの妥当性は年間実績のみでは検証できません。初年度に自社の予約データで平日比率を実測し、KPI設定の妥当性を補強します。

成果把握の章のKPI根拠にも同じ数値を短く転用できます。「自社情報で補う」段階では、応募者自身の宿泊促進策の実績や想定顧客データなど、統計だけでは埋まらない部分を提案担当者が記入します。

もう一つの例: 千葉県 防災研修事業(MP-2026-0036)

同じ型は、人口構成の説明にも使えます。

事実: e-Stat「国勢調査」2020年、千葉県の年齢区分別人口比率は15歳未満11.69%、生産年齢59.12%、65歳以上27.05%、75歳以上13.68%でした。

解釈: 65歳以上が27%を超えており、研修対象を4区分に分けて設計する事業では、高齢層向けの研修内容や実施方法を独立した論点として扱う根拠になります。

限界: 2020年単年・千葉県全域の集計であり、市町村別や研修対象地域別の粒度は持ちません。特定の市町村を対象にした研修計画の根拠にはそのまま使えません。

根拠1件の記録項目

根拠に使った公的データは、貼る前に次の項目を記録すると、審査員からの質問や社内レビューに即座に対応できます。

項目記入例
出典名観光庁『宿泊旅行統計調査』確定年間推移表(都道府県別)
URLhttps://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/shukuhakutoukei.html
取得日2026年9月
対象範囲愛媛県、令和6年(2024年)、日本人延べ宿泊者数・全国籍計
数値3,920,570人泊(日本人)、4,372,780人泊(全国籍計)
言えること年間実績に対するKPIの規模感(約0.38%)
言えないこと平日/休日別の内訳、地区別(5ブロック)内訳

よくある減点

  1. 出典名だけで取得日を書かない: 取得日がないと数値がいつ時点のものか確認できません。
  2. 調査対象の範囲を書かずに数値だけ貼る: 「都道府県別」「年計」などの範囲を省くと、異なる集計単位の数値と混同されます。
  3. 限界を書かずに断定する: 統計にない内訳(平日/休日別、地区別など)をあるかのように書くと、原典を確認した審査員の信頼を失います。
  4. 複数の統計を突き合わせずに並べる: 都道府県の統計書と国の統計で定義や調査年が異なる場合、その違いに触れないと整合性を疑われます。

まとめ

公的データを根拠にする作業は、数値を探す作業ではなく「事実・解釈・限界・提案文・自社情報」を書き分ける作業です。言えないことを認めて組み立てれば、審査員は根拠の質を一読で判断できます。迷ったらデータカタログを確認してください。

実例で確認する
よくある質問

FAQ

公的統計のどの数値を選べばよいですか。
事業のKPIや評価基準の文言に直結する数値を優先します。KPIが「宿泊者数」なら宿泊統計、「参加率」なら年齢構成や世帯数の統計というように、仕様書の言葉と同じ単位で語れる数値から選ぶと、解釈の飛躍が起きにくくなります。
都道府県の統計書とe-Statの数値が食い違うときはどうしますか。
両方を併記し、どちらの定義・調査年・集計単位かを明記します。片方だけを選んで数値を差し替えるのではなく、差異自体を「限界」として書けば、読み手はどちらを根拠として採用したか判断できます。
統計に平日/休日別や地区別の内訳がない場合、提案書ではどう書けばよいですか。
内訳がない事実をそのまま「言えないこと」として明記し、年間実績や全県集計から言える範囲までで解釈を止めます。存在しない内訳を推測で埋めるより、限界を認めたうえで代替の検証方法(初年度に自社調査で補うなど)を提案文に書くほうが評価されます。

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